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東京地方裁判所 平成11年(ワ)26383号 判決 2000年11月08日

原告

株式会社タイムリーエレガンス

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

坂田桂三

飯塚義次

被告

主文

一  被告は原告に対し、別紙特許権目録記載の特許権について、平成一一年五月一八日特許庁受付第一六七九号特許権移転登録の抹消登録手続をせよ。

二  被告は原告に対し、別紙意匠権目録記載の意匠権について、平成一一年五月一八日特許庁受付第二七四号意匠権移転登録の抹消登録手続をせよ。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

主文同旨

第二事案の概要

本件は、別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)及び別紙意匠権目録記載の意匠権(以下「本件意匠権」という。)を有すると主張する原告が、本件特許権及び本件意匠権を被告に譲渡した事実がないにもかかわらず、これらを被告に移転した旨の登録がされているとして、本件特許権及び本件意匠権に基づき、被告に対し、右各移転登録の抹消登録手続を求めた事案である。

一  前提となる事実(当事者間に争いがない。)

1  原告は、本件特許権及び本件意匠権の各権利者として、いずれも平成一〇年九月二五日にその設定登録を受けた。

2  本件特許権については、平成一一年五月一八日特許庁受付第一六七九号

(同年六月四日登録)をもって、被告に対する特許権移転登録がされている。

3  本件意匠権については、平成一一年五月一八日特許庁受付第二七四号(同年六月四日登録)をもって、被告に対する意匠権移転登録がされている。

二  争点

原告から訴外株式会社後藤商事(以下「後藤商事」という。)に対し、後藤商事から被告に対し、それぞれ代物弁済により、本件特許権及び本件意匠権が譲渡されたか。

(被告の主張)

(一) 後藤商事は、平成一一年二月から同年四月にかけて、次のとおり、弁済期を定めずに原告に金銭を貸し付け、また、原告から返済を受けた(以下「本件消費貸借」という。)。

平成一一年二月一二日 五〇万円 貸付け

同年二月二〇日 四六万五二四三円 貸付け

同月二〇日 三〇万円 返済

同年三月二日 五万〇三七〇円 貸付け

同月一〇日 一五〇万円 貸付け

同月一五日 五万円 返済

同月一八日 二五万円 返済

同月二五日 一八万一八五三円 貸付け

同月二五日 三〇万円 返済

同年四月一日 一七〇万円 貸付け

(二) 原告は、平成一一年四月五日、前記貸金債務の残高三四九万七四六六円の弁済に代えて、本件特許権及び本件意匠権を後藤商事に譲渡した(以下「本件代物弁済」という。)。

(三) 被告は、平成一一年三月二五日、後藤商事に対し、弁済期同年五月一八日と定め、金八五〇万円を貸し渡し、後藤商事は、同年五月一七日、右貸金債務の弁済に代えて、本件特許権及び本件意匠権を被告に譲渡した。したがって、被告は、本件特許権及び本件意匠権の適法な権利者である。

(原告の反論)

(一) 原告は、後藤商事から金銭を借り受けたことはなく、また、債務の弁済に代えて、本件特許権及び本件意匠権を後藤商事に譲渡したことはない。

(二) なお、本件特許権及び本件意匠権についての被告に対する移転登録は、偽造書類によりなされたものであって、被告が、本件特許権及び本件意匠権を取得した事実はない。

第三裁判所の判断

一  原告が、本件特許権及び本件意匠権の各権利者として、いずれも平成一〇年九月二五日にその設定登録を受けたことは争いがない。

そこで、右各権利について、原告から後藤商事に対し、同社から被告に対し、それぞれ代物弁済により譲渡がされた事実があるか否かについて検討すると、本件全証拠によるも、右事実を認めることはできない。

証拠(甲五、一〇、乙一、枝番号の表記は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば、平成一一年四月ころ、原告の取締役であるCが、後藤商事の代表者であるDに対し、Dの言を信用して、白紙に「債務者」欄に原告の住所及び氏名を、「連帯保証人」欄にAの住所及び氏名を、それぞれ記入した上、押印をした書面を交付したこと、本件特許権及び本件意匠権の移転登録申請に際して添付された「譲渡証」は、Cが交付した書面に、その事実がないにもかかわらず、本件特許権及び本件意匠権を原告が譲渡したとの虚偽の事実を、原告に無断で書き入れたものであることが認められる。したがって、右譲渡証(乙一の1)は原告の意思に基づかずに作成された偽造書類であるから、本件特許権及び本件意匠権について、原告から後藤商事ないし被告に対し、権利移転があったと認定することはできない。

また、被告は、乙六、七を提出するが、右各証拠によっても、前記甲一〇の陳述内容に照らし、後藤商事と原告との間に金銭消費貸借契約及び代物弁済契約が締結されたと認めることは到底できない。

二  以上のとおり、原告は本件特許権及び本件意匠権の権利者であり、被告は権利者でないにもかかわらず、これらについて移転登録を受けたものであるから、本訴請求は理由がある。

(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 谷有恒)

<以下省略>

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